2010年3月掲載
計測ツールも揃い、いざ検査開始!
はたしてどの程度の不良が出るのか戦々恐々の日々
ドライブ調達、次の作業は
さて話を2008年初春に戻すとしよう。 DVD-R の再生不良が見つかって以来、苦い思いでお雑煮を噛み締めながら、DVD情報をネットで収集し、計測用ドライブと計測用ソフトの調達までは何とか進展した。ここで次に行うことは「選別の基準」を設けることである。
まずは基準値探しから
ネット上の、DVD計測・評価サイトでは、同じメディアを複数のドライブで計測する。データの公平性という点では重要な事なのだが、今の自分に必要なのは、手持ちの機器で正常に再生できる DVD がどれか。再生できない DVD を復旧できるかにある。そこで、この時点でエラーが発見されている 12 枚の DVD を、ゲーム機を含む 7機種で再生してみる事にした。
12 枚の再生不良メディアで、正常再生できた枚数が多い順に並べた結果は下表の通り。確認した機種が古いという点は置いておくとして、再生機器の発売時期が新しければ、再生確率が高いわけではない事が解る。
再生機器 | 発売時期 | 再生枚数 |
---|---|---|
PC(LITE-ON A4S1) | 2007年 | 8 枚 |
PC(Pioneer DVR111L) | 2007年 | 6 枚 |
東芝 RD-XS30 | 2003年 | 5 枚 |
Microsoft XBOX(旧) | 2003年 | 3 枚 |
Panasonic NV-VP50S | 2003年 | 3 枚 |
SONY PS2(50000番) | 2003年 | 3 枚 |
SONY PS2(70000番) | 2005年 | 1 枚 |
ここで、一番再現率の悪かった SONY PS2(70000番) で再生できた DVD-R メディアを計測してみると PI値は 80~100程度。再生できなかった DVD-R メディアはいずれも平均 PI 値 120 を超えているので、当方の再生環境では、PI値 が 80未満なら安全圏、 PI 値 100 を超えたメディアは焼き直しの対象として良いだろう。閾値は PI 値 100 辺りだろうか。
再度お断りしておくが、これはあくまで当方で使用しているメディアと再生機器の相性である。また当方の計測で PI 値 100 になったメディアが、他の方の計測環境で同じ数値になる保証はない。いくつかの計測サイトを見て回った所、PI 値 100 で問題なしと書いている所もあれば PI 値 20 を超えたら糞メディアと言い切っている方もいる。個人による評価のずれがある事自体、計測本来の目的である「統計による客観的データ」を逸脱している。この時点でサンプルにしたメディアも僅か 12 枚と少ないので「目安」程度に見ておいて欲しい。
いざ!計測本番!
ここまで来れば、あとは計測あるのみ。1 枚辺りの計測に要する時間は約 10 分、1日 10 時間 / 60 枚のペースでも、1,500枚を確認し終えるのに 1 ヶ月近くかかる・・・そう考えた時点で、急速に気力が萎えていく。しかし、ここで止めてしまっては元も子もない。
ここからは、投げ出したくなる気持ちをグッと堪え、ひたすら計測を行う日々が、延々約 40 日続く。飽きっぽい性格の私にしては、よく頑張った物だと思うが、この間の日記を書くのはは止めておこう。「人の不幸は蜜の味」と考えている方々に、わざわざご馳走を振る舞う気にもなれないし、単調な作業の繰り返しでは、これといった話題もない。
さて、この結果や如何に。
全 DVD-R の計測結果が出揃った
捨てる?焼き直す?買い直す?
悪戦苦闘の40日を乗り切り、やっと辿り着いたのは、悲惨な結果だけである。ある程度、予想はしていたが、こうやって現実を突きつけられたショックは隠しきれない。DVD-R とは、この程度の代物なのか。それとも特価品に弱い貧乏人の「安物買いの銭失い」だったのか。
DVD-R 生存率 結果発表
2年前のメモ書きによれば、この時点で手持ちの DVD-R は総数 1,588枚だった。同じ作業の繰り返しで、頭も麻痺状態にあり、計測し終えた DVD-R を再計測してしまったり、カウントし忘れたりの単純ミスも多かったように思うが、結果は次の通りである。(国内・海外を生存率順に掲載)
国内メディア | ID | 確認枚数 | 生存枚数 | 生存率 |
---|---|---|---|---|
太陽誘電 | TYG02-03 | 420 | 416 | 99 % |
ソニー | TYG02 | 79 | 77 | 97 % |
三菱化学 | MCC | 40 | 38 | 95 % |
マクセル | MXL | 288 | 202 | 70 % |
その他の国内製品 | 45 | 41 | 91 % | |
国内合計 | 872 | 774 | 88 % | |
海外メディア | ID | 確認枚数 | 生存枚数 | 生存率 |
SPIN-X | CMC | 30 | 30 | 100% |
Princo | PRINCO | 38 | 31 | 81 % |
ラディウス | OPTODISC | 410 | 215 | 52 % |
RIDATA | RITEK | 68 | 19 | 28 % |
メディアエンポリアム | READDATA | 144 | 13 | 9 % |
その他の海外製品 | 26 | 8 | 30 % | |
海外合計 | 716 | 316 | 44 % |
TYG02 TYG03 のようにメディアID別(種類・記録速度)に分類する余裕が無かったのが残念。
国産 VS 海外製
一見してお解りの通り、国内製造メディアの優秀さに比べ、海外製メディアの不良率が圧倒的に高い。これは後に解ったことだが、私が購入したメディア群は、海外製でも特に「地雷」扱いのメディアが多かったらしい。この結果だけで「海外製は粗悪品」と決めつけてはいけないが、こちらもそういう製品をわざわざ好んで購入しているわけではないので、この結果もある意味で「実情」である。
国産メディア【太陽誘電】
「Thats」シリーズの DVD-R を販売する太陽誘電は、CD-R 時代からリファレンスメディアとして利用されている老舗メディアメーカーである。自社ブランド製品の製造・販売だけでなく、国内メーカーの OEM製造も請け負っており、MAXELL や TDK などの一部メーカーを覗く国内メーカー品の多くは「太陽誘電 OEM」だ。パッケージに「国産」と表記された製品はほとんどが太陽誘電製だと思って間違いないだろう。
「高品質・高単価」の代表格だった太陽誘電製品も、数年に渡るシェア争いの影響で低価格化が進んだ。お陰でここ 4年ほど、メインメディアとして利用している。不良率も圧倒的に低いが、それは書き込んでからの年数が少ない事も理解しておいて頂きたい。
国産メディア【マクセル】
HDD/DVDレコーダーを購入し、手持ちの LD/VHD を DVD-R 化し始めたのが 2002年頃。当時からレコーダーとメディアの相性問題は多く、DVDレコーダー製造各社とも Panasonic 製 DVD-R メディア以外の互換性を一切保証していなかった。この時期の Panasonic 製 DVD-R メディアが 1枚 400~500円と高額だった事もあり、比較的評判が良く、半額程度で購入できるマクセル製を購入している。そのため、古い物だと書き込んでから既に 8年以上経過しているので、マクセルの不良率が高くなるのは致し方ない所である。よく 8年も持ったと見るか、8年しか保存できないと見るかの判断はお任せしておくとする。
マクセルのメディア不良が、なぜ今まで見つからなかったのかと言うと、先に書いたように、この時期は LD/VHD の DVD-R 化が中心だった事にある。当然 LD/VHD を購入するほどのお気に入り映画ばかりなので、廉価版の DVD が発売されると、性懲りもなく買い直している。不要になった DVD-R は捨てても良かったのだが、誰か欲しい人がいればあげるつもりで放置しておいたため、確認していなかった。
海外製メディア
安さにつられて購入したのが運の尽き。5年スパンで保存できるメディアは皆無と言えるほど悲惨な状況になってしまった。CMC製のように、非常に優れた結果が出たメディアもあるにはあるが、評価を判断できるほどの使用枚数ではない。意外だったのが Princo 製品だ。巷では「糞メディアの代名詞」になっているが、手持ちディスクの保存状態は良好だった。
廉価版DVDで買い直すか?それとも焼き直すか?
これからが修復本番
さて買いなおすか
DVD の本格的な普及から 10 年も経てば、さすがに大多数の映画タイトルは、DVD でリリースされている。往年の名作モノクロ映画に至っては、ワンコイン 500円で購入できるご時世である。今回の不良メディア大量消失は「しょうがない」と諦めて、主だったタイトルを DVD か Blu-rey で買い揃えるべく、リリース情報を確認してみた。
消失した約 500タイトル中、既に DVD を入手済みの作品が、約 70 枚。これは無条件で処分。残り 430 枚の内、Blu-rey でリリースされている物は僅か 8 作品。DVD で 約 110 作品ほどだった。今回はタイトル数の少ない Blu-rey は諦め、1,000 円台で購入できる DVD タイトル 30 作品を補充して、残り約 400 枚の救済開始である。
まずは PC のドライブで救済
据置型 DVD 機で再生できないメディアでも、PCに接続したドライブでなら読めるメディアも多い。そこでまずは、DVD メディア検証用に購入した LITE-ON 製ドライブから、Windows エクスプローラーでファイルを抽出して、DVD に焼き直してみた。これで「ある程度」救済出来たメディアが約 130枚。但し、すべてが元の状態になったわけではない。
実際に再生してみると、途中でコマ送り状態になってしまう物や、ブロックノイズが発生してしまう物もあり、完全復旧とは言い難い。ファイルとして抽出出来たのだから元と同じ状態ではないのかと疑問に思われる方もいるだろうが、「データとして詠み出せた」事と「そのデータが元の情報をすべて持っている」かは別問題と言う事だ。読み出した時点で、既に元の情報が欠損しているのだろう。「ある程度」と表現したのはそういう理由である。
使い道の無かった古いドライブで
等倍速や 2~4 倍速程度の PC 用 DVD ドライブ初期の製品。回転速度が遅く、読み取り制度が甘い事が幸いし、エラーディスクの読み出しに成功する場合があるらしい。理屈としては合っているような気もするし、都市伝説にも聞こえる話だが、物は試しと、古いドライブを押し入れから引っ張り出して試してみると、意外や意外!予想に反して、約 30 枚を復旧させる事に成功した。これはうれしい誤算だった。
CD/DVD リカバリツール
DVD が読み取れなくなるケースは、CD 時代から頻繁に発生していた。従って、CD や DVD からファイルを抽出する「リカバリ専用ソフト」も多数リリースされている。今回はその中から、無料で利用できる「CD Recovery Toolbox」を利用してみる事にした。海外製のソフトだが、操作自体は非常に単純なので、英語が苦手な方でも問題なく利用する事が出来るだろう。
CD Recovery Toolbox(英語)
「CD Recovery Toolbox」に代表される「リカバリツール」は、DVD ドライブのハードウェアを直接制御し、読み出し回転速度を落としたり、同じ領域を複数の方法で読み取るなどの処理を行い、データの復旧を試みる。但し、ドライブ本来の読み取り性能が高まるわけではないので、過度に期待してはいけない。また、ドライブ自体にも相当の負荷がかかる事は覚悟しておこう。 ちなみに、今回の修復時にもっとも時間がかかったディスクだと、最初の 1 ギガを読み終わるまでに 1 時間弱もかかっており、本来ならば、ここまでドライブを酷使する前に諦めるべきだと思う。部分的に止まる程度ならば、山を越えればリカバリできる可能性が高い。
結果「CD Recovery Toolbox」を利用して読み出しに成功した枚数が 15 枚。メディア復旧作業として考えられるのはこの辺りが限界だろうか。
メディア復旧総決算
結果的に、復旧を試みた枚数 400 枚中で、多少の問題を抱えながらも復旧した枚数は、半数に満たない 180 枚弱となった。エラー発見当初は自暴自棄で諦めていたのだから、これでも上々の結果だと、自分自身を納得させる事にした。
復旧作業の状況を 1ページで纏めたが、実作業は 2 ヶ月以上に上っている。メディア検証から始まって半年近くもの無駄な時間と費用を費やしてしまった。